1290.退職した教員の欠員分は,他の教員が授業を掛けもちできるの?

 現実には,退職した教員の欠員分は他の教員で授業を掛けもちすることはできないことなのです!
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「退職した先生がやっていた授業は,他の先生でやればいいじゃないですか?」
などと,簡単に考えられがちですが,それは,とても難しいことなのです。なぜならば,次のような理由があるからです。

【退職した先生がやっていた授業を他の先生でやれない理由】
理由(1) 4月当初の仕事だけでも多い。
 定員の教員配置で,多くは4月当初,出発をします。近年は,当初から欠員を生じている学校もあるのです。4月当初,決まった定員の配置が行われ,授業が始まったとしても,余裕があるわけではないのです。
 
 いわゆる「空き時間」と言って,各担任や教科担任は,授業がない時間が数時間もらえます。学年や教科担任によっては,0時間,1時間,2時間という方もあれば,7時間といった方もあります。
 7時間といっても中学などでは,自作のテストやプリントづくり,〇付けなどの採点,専門的な教科の指導研究・専門的な教科の教材の準備(特に理科や美術など),受け持ちの生徒の進路に関する個人資料作り等など,多岐にわたります。
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 それに,校務分掌としての担当が少なくても2つや3つは任されます。
 だから,現在の各学校のかつかつの実態では,掛けもちをする余裕などないのです。年度初めからの自分の受けもちだけでも大変なのです

 さらには,子ども相手なので,様々な問題が起こってきます。学力不振・友達とのトラブル・いじめ問題・不登校気味の子への対応・問題行動への対処など,思いもかけないことが突然起こって来るのです。そこに理解の不十分な感情的な親さんが絡んでくると,一層複雑になり,対応も泣きたいくらい面倒なものになって来るのです。そんなことが,大小にかかわらず起きているのです。

 そんな状況の中で欠員が生じると,欠員した方の授業以外のいろいろな担当の仕事が割り当てられてくることになるのです。それは,誰かがその仕事を担わないと,学校が回って行かなくなるからです。
 4月当初からの仕事だけでも,いっぱいいっぱいの仕事で,余裕などないのに,
(どうしたらよいんだ。)
と途方に暮れてしまうのです。


理由(2) 欠員した先生には,1人前の仕事があった。
 4月に各教員が担当する仕事は,「学習」「生活」「健康」といった分野で,教員の組織が大まかに3つに分かれるのです。これは,各学校で分け方は違いますが,主に,その3つの範囲での取り組みとなります。これらの中身を校務分掌という形で年度初めに細分化して受け持つことになります。

 例えば,斎藤(仮名)先生が,ICT担当で,プログラミングなどを含めたコンピュータを活用した計画を作成し,各学年に指導の依頼をし,困った時に相談等や指導に入っていたとします。
 また,コンピュータ等の機器に関する業者との定期的な打ち合わせや情報交換等も行っていたとします。
さらには,ちょっとしたタブレットの不具合等も対応していたともします。このタブレットの保管や管理に関してもマニュアルを作成し,子ども達や教員にその遵守の徹底を常日頃働きかけていたとします。

 この斎藤先生が,学校に来れなくなって,欠員を生じたとします。誰かが,その担い手にならなければいけませんが,みんながみんなそうしたICTの知識や対応力をもっているものではありません。そこで,その仕事をあてがわれた教員は,
(ぼくにはできない。どうしよう。今でも手一杯なのに,新たに勉強をするなんて無理だ。)
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と落ち込んでしまうのです。

 そもそも,校務分掌をこなしていくには,仕事内容の習熟と教えてくれる教員が必要なのです。これがないと負担感は増大するばかりです。
 だから,校務分掌は,毎年交代するようなことはあまりしなくて,3年くらいは同じものを多くの場合,担当して習熟してもらい,次に移るのです。だから,斎藤先生が退職などをしたら,教えてもらうこともできないのです。
 こんな風に考え落ち込むと,今度は,任された木下(仮名)先生もつぶれてしまうということが起こって来るのです。 
 授業だけでなく,授業以前の組織的な環境づくりから難しくなるのです。こんなことが,起こっているのです。


理由(3) だれもが,どの授業でもできるというものではない。
 特に中学校では,専門教科の免許がないと教えることはできません。国語を教えるのには,国語科の免許がいるのです。

 でも,その免許がなくても教える方法はあるのです。それが,免許外担任制度申請(免外申請)というものです。詳しくお知りになりたい方は,「ココ」をクリックしてください。
 これを申請し,都道府県の教育委員会で許可されると,自分の専門教科以外の教科も1年を限って,教えることができるようになります。

 従来も,この免外申請で教えるということはありました。例えば,山間部や都市部でもドーナツ化現象で生徒の数の少ない中学校があります。その中学校に行けば,教員の数は当然少なくなります。そんな時,国語や体育などを免許がなくても,免外申請をして,国語や体育を教えるということになります。

 私もこの免外申請で,数学と体育を教えることになったのですが,この2つの教科は,元々好きな教科で,しかも小学校で高学年も教えていたので,何ら抵抗もなく,むしろ,
(あの数学の先生よりも,分かりやすい授業をして,子ども達の成績を上げてみせる。)
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と努力し,実際に成績もよく,受け持ちのクラスじゃない生徒から,
「先生,ぼくたちの数学も教えてください。今の先生,分からないです!」
などと嬉しくもあり,悲しくもある声を聴きました。
 
 でも,みんながみんな,免外申請で,自信をもって教えられるものではないのです私のように,まだ,4月から担当になり,自分の持ち時間として専門の教科でない教科を教材研究をして教えて行くのならばよいのですが,途中から,いっぱいいっぱいの授業に加えて,専門ではない教科をわかりやすく楽しく教えるということは,至難の業なのです。
 非常に過酷なことなのです。だから,校長は,あえてそれを頼めないでいる方があるのです。そうなれば,
「夏休み明けから,本校の社会科授業をしていただける方がいらっしゃいましたら,ご紹介いただければ幸いです。」
となるのです。でも,現実には,
「何とか見つかるまで,みんなで分担して,抜けた先生の分の教科を教えよう。子どもに教える人がいないなんてあってはいけない。」
などと,無理を承知で,頑張っている学校も現実にはあるのです。だれがつぶれてしまっても,おかしくはないのです。
 30時間の1週間の授業数に対して,22時間が,4月当初に担当になったとします。そこに,9月から,欠員の先生のしかも専門でない教科が,週6時間入ったとします。
 この2時間で,自作のテストやプリントづくり,〇付けなどの採点,専門的な教科の指導研究・専門的な教科の教材の準備(特に理科や美術など),進路に関する個人資料作り等など,多岐にわたって取り組むことはできないのです。放課後も4月当初から残業だったのが,一層残業に拍車をかけるのです。
 それに,校務分掌としての担当が自分のものと,あとから回ってきたものなどが付加される方もあるのです。考えられないような現実なのです。

 退職した教員の欠員分は,他の教員が授業を掛けもちすることは普通はできないのです。やっている学校は,すごい学校なのですが,感心をしているだけではいけないのです。その先生たちの精神と体が,とても心配なのです!

 我が子の学校の状況にも,子どもと話をする中で,敏感にとらえられる親となって行きましょう! もしこうした困った状況があるのならば,それこそ,PTAの出番だと思います。

PS.この文章を8月6日にアップした際に,「校務分掌」を「公務分掌」と誤記してしまい,数名の方に,「「公務分掌」ではなく,「校務分掌」ではないですか?」
と, ご指摘を親切にしていただきました。有難うございました.。

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プロフィール


名前 : えいちゃん(柘植 英次)
趣味 : 読書・魚釣り
教育関係履歴:岐阜県の教員
教頭・可児市主任指導主事・校長を経験

40年以上教育に携わった元校長先生が、子育て支援アドバイザーとして、家庭や学校で実践できる方法をお伝えします!

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