1285.「1年目の非正規教員が「自己流」で教壇に立つ異常!」って本当なの?
2022.08.01 19:00|教師との連携・教師のバトン|

我が子の先生は,しっかりと学習指導や生活指導をしてくれていますか?
ヤフーニュースの「東洋経済 ON LINE」 2022年7月30日で,
「1年目の非正規教員が「自己流」で教壇に立つ異常,育成されずに切り捨てられる教員たち」
と題する記事が載っていました。
この内容を見て行くと,実際にそうした学校があるかもしれないけれど,とても信じられないこともありました。そのことについて触れてみます。
問題提起(1) 「まったく何も手を打たない行政や学校の管理職」というイメージ操作とも見受けられる。
公立学校では,非正規雇用の教員が増え続けていることは間違いのないことです。増え続けているというよりも,正規の教員も非正規の教員も不足しています。
だから,病気になる教員も増えているのです。これは間違いのないことです。
この記事の公立小学校で非正規教員として働く教員は,大学4年の時に教員採用試験を受けたが不合格となって,翌年は地元の小学校で臨時的任用教員(常勤講師)として働くことになったそうです。でも,
◆「2年生の学級担任になりましたが,何をやってもうまくいきませんでした。日々の授業も子どもたちへの指導も自己流,見よう見まねでやっていましたから。すぐに学級崩壊に近い状態となり,教頭先生にも学級に入ってもらいながら,何とか1年を乗り切った。」

ということだそうです。この内容を見ると,
◆「なんてひどいことをするんだ。かわいそうじゃないか。」
と,教員であり管理職であった私でさえも思うのです。これが事実ならば,この学校の先生のサポート体制が悪いのです。
私が教頭や校長の時にも,新卒で常勤講師の教員が何人もいました。でも,こんなことはありえないのです。なぜならば,学年は学年体制を大切にし,学年主任がいくつかある学級の先生と学年会を定期的に開いて,
●学期初めならば,席の決め方や話す内容,授業の進め方,配慮事項をきめ細かに確認し,同じようなスタートを切るからです。そうしないと,未経験の先生のクラスは,ごちゃごちゃになることは想像ができるし,なることは明らかです。
●また,毎週学年会を定期的に開き,
「どのように指導するか。」
「指導の難しい子は,どのように対処するとよいか。」
「学校行事・学年行事等があれば,だれがどのように対応するか。」

などを確認して,共同歩調をとるのが岐阜県では普通だからです。
●また,実際の授業指導等ができているかは,学年主任がのぞいたり,教務主任や教頭,校長が随時参観したりして,指導するはずです。そうでないと,あとで学級崩壊を起こってからの対応は,一層大変なことがわかっているからです。
●もし,学年が単学級(1クラスしかない)ならば,小学校で言えば,6人です。その中の常勤講師ならば,教務主任か教頭,あるいは校長がついて教えるはずです。
問題提起(2) 「非正規教員は,何の研修も施されないまま,教壇に立たされ続ける」って本当なの?
岐阜県の小学校では,みんなが原則はどの教科も受け持つ(教科担任制の教科は別)ので,全校研究会を実施するときは,正規の教員でも非正規の常勤講師でも,区別なく授業研究会を行います。授業公開の担当をするのです。平等に研究会に臨むのです。
あるいは各種の研修にも同じように取り組むのです。その際には,常勤講師のクラスの授業であっても,
◆「〇年〇組の結奈(仮名)さんの今日のこの発言は,それ以降,みんなが発言できるきっかけになってよかったと思います。日ごろ,どのようにして,今日の結奈さんのような発言ができるように指導しているのですか?」
といった認めの発言や,
◆「今日の琢磨(仮名)さんの意見は抽象的で,分かりにくかった。あの時に,
『それって,もっとわかりやすく言うと,どういうこと?』
などと切り返して聞いていたら,もっと話が深まって行ったんじゃないかと思うよ。」

といったように手厳しいやりとりもあります。そこには,正規の教員と常勤講師との区別はないのです。
もし,こうした研究会や研修会がない学校があるとすれば,それは,そこが問題なのです。
確かに,初任者研修といったものは,常勤講師には位置づいていませんが,こうした研修はあるはずです。
「こうしたものが全くなく,ひどい組織が学校である。」
という風にもって行きたいのかと疑ってしまうのです。
問題提起(3) 非正規教員を切り捨てればよいと思っている教員はいない。
別のある小学校の中堅教員は,
「採用側に非正規教員を『育成しよう』という意識はありません。」
と言っていると紹介し,さらに,
◆「そんなことするはずがありません。できが悪ければ切り捨てればいいと考えているわけですから。非正規教員は,あくまで臨時的な穴埋め人員にすぎない。そんな人間にお金と手間をかけて研修を施すなんて考えは,行政サイドにありません。」
などと,ある先生の言葉として載せています。もし,そんなことが実際にあったら,それはもはや教育ではなくなってしまいます。
私も行政の教育委員会にいて,常勤講師や非常勤講師の担当をしていましたが,
◆「あの先生(常勤講師のこと)は,正規教員になることを目指し,一生懸命に頑張っている。何とかして来年は受かってほしいものだ。」
と応援をしていました。市としても,講師研修を担当していました。
学校の管理職になっても,「臨時的な穴埋め」などと考えたことはありません。
◆「よくわが校に来てくれました。困った時は,いつでも相談してください。採用試験の勉強で困ったら,何でも教えますよ。本校の教育に力を貸してください。」
このように,思って対応し,私は,校内採用試験勉強会も立ち上げました。採用試験の面接の仕方や出そうな問題を出し,どのように考えることが子どもを中心に考えた授業実践なのかを教え,試験に臨んでもらいました。多くの関わった常勤講師は正式採用をされました。

「かわいそうに書けば,読者が読んでくれる。」
こういった意図があるようでなりませんでした。もし,本当にこの記事のようなことがあるのならば,もはや教育行政にかかわっている人や学校現場の先生たちがおかしいのです。狂っているのです!
1年目の非正規教員が「自己流」で教壇に立ってはいけないのです! もし我が子の先生がそんな風な状況ならば,我が子のためと同時に,その先生のためにも学校に働きかけなければいけないのです!
教員も子どもも助け合って,自分の思いを達成できるところに真の教育はあるのです!
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